建設業許可の実務経験を証明できない!請求書・注文書がない場合の対処法
「建設業の仕事は10年以上やっている。でも、昔の請求書や注文書が残っていない」
建設業許可のご相談では、このようなケースが少なくありません。
建設業許可を取得するためには、一定の要件を満たす必要があります。その中でも、資格を持っていない方が実務経験によって営業所技術者等の要件を満たそうとする場合には、単に「何年も仕事をしてきた」と説明するだけでは足りません。
重要なのは、その実務経験が本当に許可を受けようとする業種の経験に該当すること、そして、その経験を客観的な資料によって確認できることです。
この記事では、建設業許可の実務経験を証明できない場合に、どのような資料を探せばよいのか、請求書や注文書がない場合にはどう考えればよいのかを、岐阜県の取扱いを踏まえて解説します。
建設業許可では「経験がある」だけでは足りない
建設業許可において、営業所技術者等の要件を実務経験で満たす場合、原則として実務経験証明書(様式第9号)を作成します。
岐阜県の建設業許可申請の手引では、実務経験によって営業所技術者等の要件を満たす場合、実務経験証明書に加えて、実務経験の内容を確認できる資料の提出が必要とされています。
具体的には、実務経験証明書の記載だけでは業種の確認が難しい場合などに、契約書や注文書の写し等、工事請負の実態や業種が分かる資料を提出します。
また、岐阜県では、契約当事者双方の合意に基づいて作成されたことが確認できる書類について、見積書や請求書等も確認資料として認められる取扱いがあります。
つまり、実務経験の証明では、単に「10年間建設業に従事していた」という在職期間だけでなく、「どのような工事に従事していたのか」まで確認できることが重要になります。
実務経験の証明に使われる資料とは?
実務経験を確認するための資料として、まず確認したいのが次のような書類です。
- 工事請負契約書
- 注文書
- 請書
- 見積書
- 請求書
- その他、工事の内容や請負の実態を確認できる資料
重要なのは、資料の名称そのものではありません。
その資料から、「誰が」「誰から」「どのような工事を」「いつ請け負ったのか」などを確認できるかどうかがポイントになります。
例えば、電気工事の実務経験を証明したいにもかかわらず、単に「工事代金○○円」としか記載されていない請求書では、具体的な工事内容を確認することが難しい場合があります。
一方で、工事名や工事内容、請負者、発注者などが記載されていれば、実務経験の内容を確認する資料として利用できる可能性があります。
岐阜県の手引でも、実務経験証明書において業種の確認が困難な場合等には、契約書・注文書等の提出を求める取扱いが示されています。
「請求書しかない」場合でも諦める必要はない
実務経験の証明について相談を受けると、
「契約書は全部捨ててしまった」
「注文書は残っていない」
「請求書なら何年分かある」
というケースがあります。
この場合、請求書しかないからといって、直ちに実務経験を証明できないと決まるわけではありません。
岐阜県では、契約当事者双方の合意に基づいて作成されたことが証明できる書類として、見積書や請求書等に発注者の証明があるものも確認資料として認められています。
そのため、手元に残っている資料を一つずつ確認し、どの資料からどの期間・どの業種の工事を証明できるのかを整理することが重要です。
ただし、どの資料が実務経験の証明として使えるかは、工事の内容や申請先、資料の記載内容などによって判断が異なるため、「請求書があるから大丈夫」と単純に判断するのは避けた方がよいでしょう。
以前勤めていた会社から証明してもらえない場合は?
過去に勤務していた建設会社での経験を実務経験として使用する場合、その会社から実務経験を証明してもらうことが基本となります。
しかし、次のようなケースもあります。
- 以前勤めていた会社が廃業している
- 会社が解散している
- 代表者と連絡が取れない
- 会社側に資料が残っていない
- 転職してから長期間が経過している
このような場合、実務経験の証明が難しくなる可能性があります。
岐阜県の実務経験証明書にも、「使用者の証明を得ることができない場合はその理由」を記載する欄があります。つまり、過去の勤務先から証明を得られないケースが想定されています。
ただし、「元勤務先から証明してもらえない」という事情だけで、直ちにすべての実務経験が認められるわけではありません。
なぜ証明を得られないのかを整理したうえで、手元にある資料などから経験を確認できるかを個別に検討する必要があります。
以前に建設業許可を取得していた会社で働いていた場合
過去に勤務していた会社が建設業許可を取得しており、そこで営業所技術者等として登録されていた場合には、別の確認方法を検討できる場合があります。
岐阜県の建設業許可の手引では、過去に建設業許可業者において営業所技術者等を務めていた方について、当時の許可申請書を確認資料としたい場合には、個別に相談するよう案内されています。
そのため、過去の勤務先で建設業許可を取得していたことが分かる場合には、
- 当時の建設業許可の内容
- 当時の営業所技術者等の登録状況
- 当時の許可申請書類
- 現在手元に残っている工事関係資料
などを確認してみる価値があります。
「10年働いた」=どの業種でも10年、ではない
実務経験を証明する際に、特に注意したいのが「経験年数」と「経験した業種」は別の問題だということです。
例えば、建設会社に10年間勤務していたとしても、その10年間すべてが許可を取得したい業種の実務経験として認められるとは限りません。
建設業許可では、原則として実務経験によって営業所技術者等の要件を満たす場合、許可を受けようとする業種について10年以上の実務経験が必要となるケースがあります。
また、複数の業種について実務経験を使用する場合には、経験期間の重複が問題となります。
例えば、10年間にわたって「大工工事」と「屋根工事」の両方に従事していたとしても、その10年間をそのまま大工工事10年+屋根工事10年として合計20年にすることはできません。
岐阜県も、原則として実務経験期間の重複は認められず、1業種につき10年の実務経験が必要で、2業種なら20年の経験が必要になる旨を案内しています。なお、一定の場合には実務経験の振替が認められる制度があります。
実務経験の証明でよくある失敗
①「経験年数」だけを確認してしまう
「10年以上働いているから大丈夫」と考えてしまうケースです。
実際には、どの業種の工事に従事していたのか、その経験をどのような資料で確認できるのかまで検討する必要があります。
②会社に在籍していた証明だけを集める
在職期間を確認できる資料があっても、それだけでは具体的な工事内容まで確認できない場合があります。
実務経験の証明では、在職期間だけでなく、実際にどのような工事に従事していたのかを確認できる資料も重要です。
③10年前の資料から順番に探し始める
10年間分の資料をすべて集めようとして、膨大な作業になってしまうことがあります。
まずは、どの期間について、どの業種の経験を証明する必要があるのかを整理してから資料を探す方が効率的です。
④「この請求書なら使える」と自己判断する
請求書や注文書が残っていても、工事内容が不明確であったり、実務経験として必要な情報が不足していたりする場合があります。
資料の枚数を集めることよりも、その資料から何を証明できるのかを確認することが大切です。
実務経験を証明できるかは「資料の組み合わせ」で考える
実務経験の証明では、一つの資料だけですべてを証明しようとする必要はありません。
例えば、
- 在職期間を確認できる資料
- 工事の内容を確認できる資料
- 工事の請負関係を確認できる資料
- 過去の建設業許可申請書類
- その他、実務経験を裏付ける資料
などを組み合わせて、実務経験の事実を確認できるか検討します。
特に古い工事については、契約書や注文書が残っていないことも珍しくありません。
だからこそ、「契約書がない=許可が取れない」と考えるのではなく、現在残っている資料を確認して、何をどこまで証明できるのかを整理することが重要です。
実務経験の証明に不安があるなら、申請前に確認を
建設業許可の申請準備を進めてから、「実務経験を証明できる資料が足りない」と分かると、申請業種や営業所技術者等の選定そのものを見直す必要が生じることがあります。
そのため、建設業許可を取得したいと考えた段階で、まず次の点を整理することをおすすめします。
- 誰を営業所技術者等にするのか
- どの業種の許可を取得したいのか
- その人は資格で要件を満たせるのか
- 資格がない場合、どの業種の実務経験が何年あるのか
- その実務経験を証明できる資料が何か残っているのか
この順番で確認していけば、「経験年数は足りていると思っていたのに、証明資料が足りなかった」という事態を避けやすくなります。
まとめ|建設業許可は「経験があるか」だけでなく「証明できるか」が重要
建設業許可の実務経験については、単に「10年以上建設業をしてきた」という事実だけで判断することはできません。
どの業種の工事に従事していたのか、その経験を客観的な資料によって確認できるのかという点が重要です。
契約書や注文書が残っていなくても、請求書や見積書など、他の資料によって実務経験を確認できる場合があります。一方で、資料が残っているからといって、必ず実務経験として認められるとは限りません。
また、過去の勤務先から証明を受けられない場合や、複数の建設業種について実務経験を使用したい場合など、個別の判断が必要になるケースもあります。
建設業許可を申請する際には、「経験年数が足りているか」だけでなく、「その経験をどう証明するか」まで含めて事前に確認することが大切です。
岐阜県の建設業許可については、現在の取扱いや必要書類が改正されることもあります。実際に申請する際には、最新の手引や提出先の取扱いを確認する必要があります。岐阜県では、建設業許可申請の手引や実務経験証明書の様式を公開しています。
「実務経験はあるけれど、何を資料として用意すればよいか分からない」「昔の会社の資料が残っていない」「この経験で電気工事業・解体工事業などの許可を取れるか確認したい」といった場合は、申請準備を始める前に一度ご相談ください。


