経営業務の管理責任者②:5年以上の建設業役員経験がなくても許可が取れる?直接補佐者とは?【建設業許可解説#7】

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建設業許可の6要件
▼経営業務の管理責任者(常勤役員等) ←今回
▼社会保険等加入
▼専任技術者
▼誠実性
▼財産的基礎等
▼欠格要件


適切な経営能力を有すること(経営業務の管理責任者等)

前回は「経営業務の管理責任者」の要件について触れていきましたが、
今回はもう1つの要件について解説していきます。

2人以上の経営体制で「経管」の要件を満たすパターンで、建設業の常勤役員等としての経験が5年以上ない場合の方法です。
①建設業での常勤役員等の経験が少ない人物を補う
形で、②その人物を直接補佐する者を別に置く、という構図になります。

(ここでは岐阜県の場合について見ていきます。以下、表は岐阜県建設業許可の手引きより引用)

(2)常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者

①常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、
②財務管理の業務経験を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。

まず①に該当する人物はどのような方でしょうか。次のエ・オが該当します。
(以下、役員等は個人事業主やその支配人も含みます)

エ 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者

建設業で役員の経験は2年しかないが、この2年を含めてトータル5年以上の役員等の直下にある管理職(部長クラス)で財務・労務・業務のいずれかの経験がある者が対象です。

財務管理:建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験
労務管理:社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験
業務運営:会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験


例:建設業を営む会社で部長として工事部の財務管理を3年、その後同会社で取締役を2年経験した人物


オ 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者

建設業の役員の経験は2年しかないが、この2年を含めてトータル5年以上の建設業に限らない会社の役員経験がある者が対象です。

例:測量業を営む会社で取締役を3年、建設業を営む会社で取締役を2年経験した人物

共にまず、建設業の役員経験2年以上が前提としてあり、建設業に関して部長クラス以上の地位での経験を合わせて5年以上、または建設業以外であれば役員クラスで合わせて5年以上の経験が必要となります。

このような経験を持った人物に併せて、②直接補佐をする者(以下のカ・キ・ク)をその会社に置く必要があります。

カ)許可の申請を行う建設業者において5年以上の財務管理の業務経験を有する者
キ)許可の申請を行う建設業者において5年以上の労務管理の業務経験を有する者
ク)許可の申請を行う建設業者において5年以上の業務運営の業務経験を有する者

財務管理:建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験
労務管理:社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験
業務運営:会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験


この補佐経験者は、申請会社おいてそれぞれ5年以上の経験が必要です。
同一人物であっても可能で(上記経験者を1~3人置けばよい)その場合、経験期間は重複していても構いません。

こういった人物を、常勤役員等(エまたはオの人物)から直接指揮命令を受けて業務を行う直属の者として配置します。

以下にまとめた図表を掲載します。(※参考:東京都建設業手引き、一部改変)


まとめ


以上の要件は、令和2年の改正によって新たに設けられたもので、一見、経管の対象者が広がって建設業許可の取得がしやすくなったように思えます。

しかし実際のところ、認めてもらえる地位や経験が非常に複雑で、
今回は触れませんでしたが証明書類を用意するのにも、場合によっては大変な労力をかけることになります。
例えば、業務経験では経験部署の在籍確認をするための人事発令書や社員名簿、
経験内容の確認のための発注書や稟議書などが必要となり、前職の会社の協力が必要になる場合もあります。

やはり前回の(ア)のパターン(建設業役員経験5年以上)をベースに考えていく必要があるのかな、といったところが私の所感ではあります。
これらは新規許可向けというより、既に許可を取得した会社の、経管の後任に5年の役員経験者が居なかった場合のセーフティーネットとして考えた方が良さそうですね。


以上、経営業務の管理責任者についての解説でした。
この件に関してお問い合わせがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。