建設業許可申請専門の行政書士が解説!事業年度終了届について(2)

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はじめに


建設業許可を取得されている皆様、事業年度終了届(決算報告)はきちんと提出されていますか?

事業年度終了届は、建設業法で定められた重要な手続きの一つです。
しかし、「面倒だから後回し」「よくわからないから」といった理由で、提出を忘れてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本コラムでは、事業年度終了届の重要性や作成方法、提出が遅れた場合のリスクなどについて解説します。

事業年度終了届の提出期限


事業年度終了届の提出期限は、事業年度終了後4ヶ月以内です。
例えば3月31日に決算を迎える場合、7月31日までの提出となります。

実際には決算終了後2ヶ月以内にしなければならない確定申告の完了を待って、事業年度終了届の作成に移ります。
というのも事業年度終了届の中の「財務諸表」を作成するには、確定申告書一式が必要になってくるからです(理由は後述します)。
ですので、事業年度終了届の作成期間は実質2ヶ月程度となってしまいます。

事業年度終了届に提出する書類


事業年度終了届に提出する書類は、都道府県によって多少異なりますが、一般的には以下の書類が必要になります。


• 変更届出書(事業年度終了届用)
• 工事経歴書(直前1期分)
• 直前3年の各事業年度における工事施工金額
• 財務諸表
  貸借対照表
  損益計算書
  株主資本等変動計算書
  注記表
  附属明細表(資本金1億又は負債200億円以上の株式会社のみ)
• 事業報告書(株式会社のみ)
• 事業税の納税証明書(法人又は個人事業税)
• 使用人数(変更がある場合)
• 健康保険等の加入状況(従業員数のみ、変更がある場合)
• 令第3条使用人の一覧表(変更がある場合)
• 定款(変更がある場合)
• 委任状(代理人による提出の場合)


今回は特に重要な「工事経歴書」と「財務諸表」について簡単に解説していきます。

「工事経歴書」の書き方


工事経歴書には直前1期分の工事実績を記載します。
事業年度が毎年4月1日~翌年3月31日の場合はその間に完成した(または未完成の)工事を記載します。
各都道府県の記載要領にはその詳細が載っていますが、ここでは岐阜県の場合を見てみましょう。


工事経歴書は、許可業種ごとに作成します。
許可業種で実績のないものは「工事実績なし」と記載し、許可業種以外の工事実績は「その他」へ記載します。

(1)記載事項
「注文者」「元請/下請の別」「工事名」「工事現場の都道府県及び市区町村名」「配置技術者」「請負代金の額」「工期」など

(2)記載方法
〈経営事項審査を受審しない場合〉
【完成工事】
① 元請及び下請工事について、完成工事全体の7割を超えるところまで、
又は、10件までのどちらか少ない件数を請負代金の額の大きい順に記載
【未成工事】
② ①に続けて、主な未成工事について、請負代金の額の大きい順に記載

※〈経営事項審査を受審する場合〉は別のコラムで解説します。本コラムでは省略。
  また、あくまで岐阜県の場合であって、他の都道府県知事許可の場合や
  国土交通大臣許可の場合は異なりますのでご注意ください。


ではどのような手順で作成するか一例を挙げます。


作成方法一例
とりあえず元請・下請かかわらず、請負代金の額が大きいベスト10の工事の契約書(注文書)を集める。
大きい順に記載していき、完成工事全体の7割を超えたら記載終了。超えなくても10件記載したら終了。主な未成工事を記載する。



経営事項審査を受審しない場合は比較的シンプルです。
ただし配置技術者や「直前3年の各事業年度における工事施工金額」や「損益計算書」との整合性に気をつけましょう。
また、許可業種ではない工事で500万円以上の工事を請け負った場合は建設業法違反となりますのでご注意ください。

経営事項審査を受審する場合は、記載方法がぐっとややこしくなります。
また事業年度終了届を提出した後に経営事項審査を受審するわけですから、その後も見据えての作成となり、かなり神経を使うことになります。

「財務諸表」の作成


財務諸表の作成には、税理士さんが作成した「確定申告書」一式を参考にします。
特にその内の「決算報告書」「別表16」といった書類は必須です。

ただし重要なのは、税理士さんが確定申告用に作成した「決算報告書」を、そのまま事業年度終了届用の「財務諸表」に転記してはいけないということです。
建設業法上の勘定科目に置き換えたり「工事原価報告書」の作成が必要だったりとひと手間もふた手間も必要になってきます。

慣れないうちは税理士さんに建設業用の「財務諸表」も作成をお願いしてもらった方が無難です。
もちろん行政書士に依頼しても構いません。

まとめ


事業年度終了届は、建設業者にとって非常に重要な手続きです。
提出を怠ると、様々なデメリットが生じる可能性があります。
本コラムを参考に、事業年度終了届についてしっかりと理解し、期限内に提出するようにしましょう。